利益率を下げないといけない時。



利益率とは『投下資本・売上高などに対する利益の比率』です。(デジタル大辞泉より引用)

ここでは、売上総利益率(粗利)について話します。売上のうち、仕入値を引いたものが粗利になります。この粗利が固定費より多ければ、黒字になります。

売上 – 仕入 = 粗利

なので、売上(価格)を上げて仕入れ値を下げれば、利益率が上がり会社は儲かります。

逆に、競合品があって価格を下げて仕入れ値がそのままであれば、利益率は下がります。

この利益率が会社のバロメーターとなり、株式会社であれば、株主がチェックする項目になります。例えば、売上が1兆円あっても、利益が10億円しかないと利益率は0.1%になり、労多くて益少ない会社といえます。

通常の会社であれば、数%の利益率があり、強い会社になってくると、10%〜20%以上のところもあります。

外国やグローバルの会社では、利益率が30%以上という会社なんかがあったりします。そういう会社は数字上、優等生に見えますが、実際のところは違います。

それは、お客さんが我慢している場合が多いのです。どういうことかというと、従業員が少ないと固定費用を低く抑えることができます。

なので、利益率が上がるのですが、いつもレジで10〜15分も並ばないといけないスーパーとか、電話が全く通じないコールセンターになったりします。

日本ではさすがに、あり得ないのですが、外国であれば皆さん辛抱強く並んでいたりします。それで、日本ではこの手の業種の利益率が低いのも、うなずけます。

せっかちな江戸っ子や大阪人には、いつもレジで10分待つなんて受け入れられないでしょう。


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最初にマネジメント研修を依頼され、次に店舗運営の相談を受けた居酒屋チェーンがありました。このチェーン店のある1店舗の利益率が悪く赤字でした。

そこは住宅街の駅前で立地はいいのにお客さんが来ないとのことで、お昼も定食をやっていました。居酒屋メニューは新鮮な海鮮を主力にしていましたが、価格が高く、周りの店と比べてほぼ2倍の客単価でした。

お昼の定食もボリュームがあって美味しいのですが、育ち盛りの10代男子しか食べない量がだされる始末で、ご飯と味噌汁のおかわり自由なんかも意味がありませんでした。

正直なところ半分の量で半分の値段にすれば、繁盛店になると思いました。。。

明らかに間違った方針です。

なので、お昼の12時でもお客さんはまばらです。特に、女性客がいません。

 

その居酒屋チェーンの営業本部長に、店舗の現状を率直に申し上げました。

すると『価格を下げて、利益率を下げることはできない。』との一点張りです。取り付く島もありません。

私:『それでは、店舗面積を小さくして1人厨房、1人ホールのオペレーションで回るようにすれば、いかがでしょうか?

営業本部長:『100人前後の集客面積で確立したオペレーションなので、そういう型にはしない。

私:『なるほど。それでは、周辺のお店を調査されましたでしょうか? 駅から徒歩5分の所で30年操業している居酒屋があります。そこは、味は普通だけど、毎日来れる価格帯になっていて繁盛しています。

駅前の別の小料理屋は10人しか入りませんが、厨房1人、ホール1人のローコストオペレーションで回していて、客数が少なくても固定費用も少ないので、しのげています。

御社のあの店舗では、どちらにも振れず赤字になっています。周辺の人たちは、御社の店舗を通り越して、わざわざ5分歩いて、他の居酒屋に行かれています。

 

営業本部長:『そうなのか。。。

 

この居酒屋チェーンでは、悪い情報が上がるシステムをもっていなさそうでした。本部長の高圧的な態度が原因かもしれません。

事前調査も十分とはいえませんでした。

組織マネジメントに問題があると、経営にも影響してくる事例だと思います。このチェーン店の他店舗は都市部や商業施設にあり、高い価格の高付加価値でも運営できていたのですが、あの店舗は利益率を柔軟に下げずに、苦戦していました。

やはり、あの地域では低価格で利益率も下げないといけない場所でした。存続できている店舗はそうしていました。

あの店舗に関する報告書と提案書を本部長に収めさせて頂きましたが、「本部長預り」という塩漬けになってしまいました。コンサルタントとしては好ましい成果とはいきませんでしたので、苦い思いがあります。

最近、日本全国で3月の初めに春の嵐が来たときがありましたが、あの居酒屋の店舗の提灯が外されました。通り行く人々は強風で外したのだと思っていましたが、実は小さく「閉店します」と貼り紙があったそうです。

駅前の小料理屋では、「風と共に去りぬ」と噂されていました。



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