どうも自分の印鑑が偽造されているみたいだ。

自分の会社で書類に実際に印鑑を押している方は多いと思います。

しかし、押した覚えのない書類が社内でまかり通っていたらどうします?

ある製造会社の品質保証課長は、製品出荷の承認を担当しているそうですが、自分が押した覚えのない出荷承認の書類が押印されて、出荷されていることに気づきました。

その書類は一連の保管ファイルにちゃんと挟まれていました。

本当であれば重大なコンプライアンス違反です。

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今日は、ある会社での話ですが、その課長がどんな対策を取ったかお話しします。

その課長が言うには、最初は「まさか?」という感じでいたそうです。

でも、気になって、会議など自席を離れる際に、机の上に印鑑を出しっぱなしにすることはやめて、身につけるようにしたそうです。

また、帰る際には机に戻して鍵をかけたたそうです。

印鑑はシャチハタで、印影は標準で同じ印影のものが売られていたそうです。

この会社では、年間に製品を1000ロットを出荷していて、その課長は、1日だいたい3〜5ロットの書類に押印して、出荷していました。

過去の保管ファイルを調べてみると、やはり知らないロットの出荷書類に自分の押印がされていました。

最初は忘れている可能性を否定出来ませんでしたが、ある日付の書類を見て「勝手に押印されている」とその課長は確信したそうです。

それは、午前中に子供が急に発熱したとの事で、保育園に迎えに行ったことから覚えていました。

忙しくしていたので、たまたまポケットに印鑑を入れたまま迎えに行ったそうです。

その日は会社に戻れず出荷承認ができませんでした。

その日は、自分の誕生日で大変な1日であったことから、記憶が残っていたそうです。

出荷書類には、製造部、品質管理部、品質保証部の合計3カ所の押印欄がありました。

品質保証部は、製造部が提出する製造記録と品質管理部が提出する試験記録を照査して、これらに問題がなければ、出荷を承認するシステムになっていました。

そこでその課長は、シャチハタの印鑑にある細工をしました。どんな細工でしょうか?

シャチハタは、後ろに詰めているカートリッジを変えれば色を変更できますので、その課長は赤から青にカートリッジを変更したそうです。

すぐには青くならなかったため、空押しして100回目ぐらいから、青と赤のインクが混じって紫っぽく変色してきたそうです。

課長は上司に事情を説明し、快諾はされませでしたが了承を取り付けて実行しました。

出荷書類に紫色の印鑑が押されるようになりました。

課長が言うには「押していくたびに色が青みがかる」そうで、日時とともに色が変化したそうです。

それからは、自分の知らない出荷書類は見つからなくなったそうです。

その細工から半年ぐらい経ってからでしょうか、完全に青くなったシャチハタ印は、またカートリッジを赤インクに変えたそうです。

今度は、空押しすると赤インクが混じって黒っぽくなってきました。

それを使い始めたそうです。

そんな印鑑は偽造する気になりません。


しかし、違う案件で影響が出てきたそうです。

それは、半年の間に製造や試験手順から逸脱する報告件数がジワリと増えてきたそうです。

逸脱で起きた不具合はその内容を評価して、品質に影響がないことを品質保証部が確認することになっています。

これが確認されないとそのロットは出荷できません。

それを逃れるために、自分の印鑑が使われていたのか? 」課長は嫌な予感がしたそうです。

 

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その頃から、出荷書類の品質保証部の印鑑の色がみっともないと噂されるようになり、親会社からの監査では、その書類を見せることから、事情を聞かれることになり不要な詮索を招くなど上司から指摘される様になりました。

課長は出荷書類にその色の印鑑を使うのをやめて、赤いインクに戻しました

しかし、課長は一枚上手でした。

嫌な予感がした頃から、次の手を打っていたそうです。

その頃から、課長は、製造記録と試験記録に年月日の日付入りの「確認印」を押すようにしたそうです。

こちらの確認印は、部の片隅にあったもので、インクは青で統一しましたが、「日」の部分だけを赤インクをつけて偽造しにくくしたそうです。

この確認印は古くて、アマゾンなど大手通販を調べたそうですが、現在、絶版で手に入れることはできなかったそうです。

つまり、偽造されにくい確認印を確保したのでした。

確認印を押すということは、品質保証部に提出した記録は、後で差し替えができなくなることを意味しました。

つまり、出荷書類の根拠となる記録で差し替えをできなくしたので、出荷書類のインクを赤に戻したところで関係ありませんでした。

なお、製造記録まで親会社の監査では提出しませんので、不要な詮索もされないと抗弁できました。

誰が自らの印鑑を偽造したかは、知りたくありませんでしたが、それをさせないシステムを持つことが有効だ」というその課長の姿勢に共感したのでした。