M&Aについての考察

今日は合併買収(M&A)について考えたいと思います。

買収した側の会社さんで買収後のスムーズな買収先との統合を何度かお手伝いした事があります。

そこから得られた経験や伺ったお話をまとめて、このブログを書きたいと思います。

買収側の立場でM&Aで失敗しないための方策は、次の3つに集約されると思います。

自社の問題

①M&Aする事自体が目的であった。

どういう事かというと、その会社では、グローバル化や内部留保金の有効利用など声高に叫ばれていて、海外のM&A案件を探してるということが業界でも知られていました。

いい案件がなくても、経営者はM&Aから引くに引けない状態になっているように見えました。

こんな時、買収先だけでなく、銀行などにもいいカモにされてしまいます。

ですので、自信を持って社長は「いい案件がないので、やーめた」と言いましょう。

それで、頭切り替えて、違う事にお金使いましょう。

②買収先の査定(デゥーデリジェンス)が甘い。

これが最も多くて、最も致命的です。

分からない技術は自社で評価出来ません。

なので、評価できるコンサルタントや会社に頼んで、いくつかの不確定要素が前提で技術評価や買収金額が算出されます。

買収後にこの不確定要素がマイナスに働く事が多く、結局損をしてしまいます。

つまり、自社の中でこの不確定要素を本当に理解して買わないと、結局損をして最終的に他社に売る事になります。

たとえ、相手先が期限を短く切ってきても、正当に評価する時間を取りましょう。

限られた人間で慌てて評価して、損する事例がいくつもあります。

③買収案件の初回案件は上手くいかない。

1度目の買収案件は上手くいかないものです。

そんな話をM&Aが得意な大企業の社長にすると、

「1枚目のパイはうまく焼けないよ」と言われました。

「2枚目から上手くいくもんだ」と。

社長にその真意を訊ねると「1回目の買収で上手くいかなかったところは、自社の多くの部長級や役員級の人たちの良い経験になる。」

「その教訓を活かせて、2回目は上手くいく。最初は高い授業料を払うことになるよ。」とのことでした。

私は「なるほど!」という感じでした。

外目には全て上手いこといってる社長に見えたのですが、実情はそんなもんなのでしょう。

買収先の問題

①売る商品が無い。

ベンチャーの会社を買収する際にはこういう事があります。

技術は凄いのかもしれませんが、商品を市場に出した事ない会社は、決してお買い得にはなりません。

というのも、現金を生み出さず、全て費用になりますし、商品化なんかも全部皮算用で進めないといけません。

何年で買収額が回収できるのかも、分かりませんし。。

先端技術の買収で自社の株価が上がって、時価総額が上がるって?

そんな他力本願でいいのですか?

②簿外債務の発生・見落とし

これが発生すると最悪です。

こんな事が起こらないように、しっかりとした弁護士に入ってもらう必要があります。

アメリカの弁護士だと、ここにも予想外の費用がかかってしまいます。

でも、仕方ありません。

高い授業料を払いましょう。

③買収先の人材が胡散臭い・高飛車

買収先で交渉に出てくる人間も注意してみます。

胡散臭い奴や高飛車な人間が出てくるところは要注意です。

何回も分かったような分からないような事をまくしたてます。

また、調子がいいので、前回と今回の会議で整合が取れていなかったりします。

そんな時は交渉する必要はありません。一喝するに限ります。

「あなたが言っている事は整合しない。交渉相手に相応しくないので、誰か違う人に変わってくれ。」

外国人でも構いません。

そんな相手先の会社の中はいい人材がいないと思われます。

どちらがボスなのか教えてあげましょう。

それでもダメなら買収交渉をやめましょう。

買収後の問題

どの会社も100点満点という事はありません。

あと、買収後にある程度の社員の離脱は覚悟しなくてはいけません。

①自社から番頭さんや金庫番を買収先に派遣します。

お金関係は自社で握ります。

担当役員や財務の分かる金庫番を派遣します。

お金を握る事は力を握る事です。

これは外せません。

②方針・目標の明確化と責任の明確化

買収後にやってはいけないのが、相手の言う通りにさせるものです。

自社の方針と買収先の業績目標は明確にします。

そのための達成方法はある程度、買収先に裁量をあげましょう。

そこまで絞ると買収先の社員のモチベーションが続きません。

あと、責任を文書で明確化します。

「あなたの責任範囲は、ここ。」

「できた場合とできない場合、どうするか?」

分かりやすく書くのが、コツです。

達成水準が明確でない場合、期限で区切ります。

出来ない事を約束しても仕方ありませんので、そこは相手と交渉します。

折れれないところは明示します。

Dead Line(死線)です。

彼ら彼女らは、期限が近づいて、出来ないのが明らかになってくると

「状況が変わった。」

「する必要がなくなった。」

なんて言い訳のオンパレードになります。

そこは冷静に評価しましょう。

社長や役員レベルだと辞めてもらわないといけなくなります。

そこが最初に文書で明確にしておかないといけないポイントです。

③買収先を合理化する。

買収先と自社で被る部門は合理化します。

例えば、〇〇企画部とか、人事部、経理部などです。

経理なんかはITシステムで人を節約できます。

買収先の経費を少なくするのが、鉄則です。

でも、強引ではなくスマートにを心がけます。

まとめ

自社、買収先と買収後の運営について考察してきました。

自社の買収目的の明確化と目利き、相手会社の信頼性(人、財務)の確認と買収後の運営について見てきました。

この3つを軸に買収を進めます。