早期退職をめぐるドラマ。
今日は、早期退職制度をめぐるドラマを見てみたいと思います。
ある業界6位のA社長は、2年前に大規模なリストラをした業界2位のB社長に電話をします。
A社長:「うちも業績が凹んで、人件費が苦しくて。2年前の早期退職はどうやってうまいことしたの?」
B社長:「あぁ、それか。それなら大手人材派遣の〇〇社に頼めばいい。そこの社長を知ってるから、紹介するよ。」
それから3ヶ月後のある日、A社の人事担当役員は会社中の部長を呼び出し、会議を開きます。
事前に会議内容は伝えていません。
しかし、何かしらただごとではない事は分かります。
①部長への首切り説明会
人事担当役員:「今日は、うちも早期退職制度で退職者を募集する事になった。会社の業績から仕方ない施策だ。募集人数に達するように各部の人数を伝える。人数を下回らないように願いたい。具体的な対応方法は〇〇社の方が、これからお話しくださいます。」
〇〇社担当:「御社の業績から、45歳以上の方△△△人辞めてもらわないと、いけないと伺っています。この人数は集まりますが、優秀な人には辞めて欲しくあリませんので、該当者には個別面談時に募集用紙はすぐに回収してください。」
それから、面接時のNGワードや辞めて欲しい人への複数回の面談方法などがつぶさに説明されました。
「証拠が残る」説明資料は配られませんので、部長は必死にメモを取っています。
その日にA社の社外ホームページに早期退職を募集して人員削減をはかることがプレスリリースされました。
〇〇社担当とA社の人事部が事前に用意した45歳以上の全てに、早期退職の応募用紙が入ったA4封筒が、各部長に渡されました。
面談の下準備が整いました。
②早期退職面談から肩たたき面談へ
部長説明会から1週間以内に45歳以上の全ての人が、部長と面談して退職の意向を尋ねられました。
ある人は、募集要項はほとんど見せられず、回収されて手ぶらで会議室から戻ってきます。
また、ある人は2時間説得を受けたといいます。
部長からは、面談を受けて昇級や昇進はこれからはありえないことが告げられます。
定年前の人はすぐさま辞めた方が得な条件が提示されます。
社内の雰囲気が悪くなってきました。
辞める事を強要しないと事前に組合側に申し入れていた会社側でしたが、実態は違いました。
いわゆる「肩たたき」がされていました。
部長もノルマがあるので必死です。
心優しい部長は「諸刃の剣」で体調を崩して会社を休む人もいたそうです。
ターゲットとされた人は無口で朴訥な人や真面目だけど積極性に欠ける人達でした。
何度もの面談で心折れる人も出てきました。
明らかに一線を超えた肩たたき面談が続きます。
そうして△△△人以上の応募者が集まりました。
③送別会にて
3月の上旬に早期退職者の送別会が各部で開かれました。
ある部では15名のうち3人が辞めます。辞める3人が挨拶します。
Sさん:「私の妻が教師をしている事もあり、辞めた後は不登校の子どもを助けるNPOで社会貢献をしたいと考えています。」
Tさん:「私は下の娘が今年大学受験で、国立を狙うことから親子で向き合える最後のチャンスと思って時間を作ることにしました。」
Uさん:「私は〇〇社で再就職を斡旋してもらうことを考えています。まぁ、少しはのんびりさせてもらいますが。」
三者三様の挨拶でした。
辞めた人は最初から早期退職制度を待っていたかのようでした。
後味の悪い別れではなく、良いスタートを切るようにも見えました。
また、4月から人事担当役員が常務役員に昇進する事が発表されました。
つまり、この施策を会社として評価していました。
これで終われば、よかったのですが。。
部長の退職勧告に従わなかった人への「示しがつけられました」。
④報復人事と追い出し部屋
人事担当役員が昇進したのに比べ、同じ4月には退職勧告を拒否した人達の行き場所もない人事異動が示されました。
以前から世間で追い出し部屋が問題になっているにも関わらず、その人達は追い出し部屋とも思える人事部直轄の部署に配属になりました。
その部署は本社とは異なる建物にあり、異様な配属であることが即座に分かります。
その部署では、〇〇社の就職斡旋を受けながら、通常業務にあたるとされています。
つまり、〇〇社は、首切りノウハウの提供から、他社への再就職斡旋までのトータルソリューションを提供しています。
一線を超えて従業員をないがしろにしたツケが来る時が来ました。
それは、A社の組合がこの状況を見過ごすことが出来ず、上部労働組合団体に状況を報告しています。野党系の国会議員がこの件で、動いていると噂されました。
⑤マスメディアへのリーク
そんなある朝、新聞を広げると週刊誌の広告の見出しにA社のリストラの惨状が載っています。
面談時の音声データも提供されているみたいでした。
それで、その日の朝1からA社広報部はマスコミ対応に精一杯です。
社内では「それ見たことか。」という反応です。
社是にも掲げる「誠実さ」が足りませんでした。
世間からの批判を浴び、すぐさま追い出し部屋が解消され、そこに配属された人達は人事部との面談の後、適正のある部署に再配属となりました。
人事部も最初からそういうことをしていれば良かったものを後追いでやるから評価されませんでした。
⑥人事担当役員の退職
マスコミや世間の批判が落ち着いた程なくして、人事担当役員が退職すると発表されました。
退職の理由までは明らかにされませんでしたが、これまでの一連の責任をとった形となりました。
取締役や社長の責任は問われずです。
経営陣としては、良い幕引きを図りました。