コンプライアンス・ホットラインにまつわるドラマ
今日は、私が体験したものをベースにして、会社のコンプライアンス・ホットラインが機能しない場合にどうなるかお伝えしたいと思います。
展開として
①社内ホットライン・社外ホットラインの設置。
②社内ホットラインが機能しない。
③社外ホットラインも。。。
④その結果は。。
となります。
①社内ホットライン・社外ホットラインの設置。
そのJ社は、ある地方の県で10指に入る会社でした。従業員300人、売上130憶円、利益10憶円の良い会社です。
それで、昨今の社会情勢から、その会社は社内と社外ホットラインの制度を整備しました。
社内ホットラインは各職場に担当者を設置し、セクハラやパワハラの相談などを最初にすることになっています。
社外のホットラインは、社内で解決できない場合に利用できる事になっていました。
社外のホットラインは、時々テレビに出ているような有名な弁護士さんの事務所に電話をできるようになっています。
もちろん、相談者や内容の秘密は守られます。社外ホットラインの電話番号が書かれた名刺サイズのカードが全従業員に配られました。
この会社も、悪い情報を上げて風通しを良くしようと考えていました。
②社内ホットラインが機能しない。
社内ホットラインの担当者ですが、各職場で指名されて社内報でアナウンスされました。各職場のこの担当者が曲者で、課長や係長など相談し難い人が多くいました。
つまり、相談相手が問題のタネだったりするのです。
すぐに、社員の一部からは「茶番劇だよね。」や「誰が相談するの?」など批判が上がります。
その担当者たちの総括は専務で、清廉潔白という感じではなく、どちらかというとダークな感じがするのでした。
③社外ホットラインも。。。
ある時、社外ホットラインの弁護士事務所の電話が鳴ります。
J社従業員:「J社の従業員なのですが、社内のことで相談したいのですが?」
弁護士事務所:「社内ホットラインで相談されたのでしょうか?」
J社従業員:「いえ。ホットラインの相談相手が、問題の当事者ですのでしていません。」
弁護士事務所: 「分かりました。お名前を頂けますでしょうか?」
J社従業員: 「秘密は守られるのしょうか?」
弁護士事務所:「もちろん守ります。」
そんな感じで、J社従業員からサービス残業についての相談がされました。
弁護士事務所: 「以上の話を承りました。会社の中でも調査が必要になりますが、この件を会社に伝えても良いでしょうか?」
J社従業員: 「不利益は被りませんでしょうか?」
弁護士事務所:「被りません。」
次の日、早速その従業員は課長に別室へ呼び出されました。課長は凄い剣幕でまくしたてます。
課長:「どうして俺に相談しないだよ。社内ホットラインの担当者なのに。」
従業員:「えっ。何の話ですか? サービス残業のこと? 課長のところに話が来ているのですか?」
課長:「そうだよ。調査しろと専務から言われたんだよ。面目丸つぶれだよ。」
従業員「。。。」
会社内で調査をしないといけないのですが、社内の調査方法がいけませんでした。つまり、問題となる当事者に調査依頼をするのは、まともな調査になりません。
専務はその課長にどんな指示をしたのかはわかりませんでしたが、相談者への配慮がなさ過ぎです。
また、弁護士事務所は社内の調査方法までに言及はしていませんでした。ただ、相談者が不利益を被らないように伝えるだけでした。
そのコンプライアンス担当である課長は、従業員たちにサービス残業をするように、ほのめかしていたのですが、課長はそれを言葉のアヤだとかゴマかすのでした。
その従業員もいたたまれなくなり、課長に相談しなかったことを詫びたのでした。
この一件の噂が広まり、ホットラインは使えないという烙印が、全社員から押されました。
弁護士事務所は問題を聴くけど、解決してくれる訳ではありませんでした。
④その結果は。。
社内ホットラインも使えない、社外ホットラインもイマイチだとなれば、社員の公正な訴えはどこに行けば、いいのでしょうか。
ある日、労働基準局がJ社に監督に入りました。
4部所が調査を受けました。あの課長の部門も含まれています。社員のタイムカードが集められています。例の課長も調査で呼ばれましたが、涼しい顔です。
課長:「タイムカードで出勤と退社を記録していますので、サービス残業はあり得ません。」
監督官:「そうですか、それではメールの履歴を見せてください。」
課長:「えっ、私のですか?」
監督官:「そうです。○月○日のメールを見せてください。 」
監督官:「あぁ、この日、タイムカードではAさんは18時には退社していますが、20時に部下のAさんとあなたは会社メールで交信しています。それに×月×日も同じです。」
課長「それは。。」
監督官:「このタイムカードは勤務記録として認められません。」
それから、1週間経ってJ社の社長は労働基準局に呼び出されました。
局長:「J社ともあろう会社がサービス残業をさせているなんて、残念なことです。 あなたの従業員の投書で調査する事になりました。」
J社長:「従業員からの投書ですか。お恥ずかしい。申し訳ありません。残業代は精算いたします。」
弁護士事務所に相談した従業員が、労働基準局に投書したのでした。 悪くもないのに課長に謝った日が悔しくて忘れられなかったそうです。
相当の残業代が払われたので、従業員は溜飲が下がりました。J社長は全社員を集めて謝罪しました。
社内の悪い情報が上がる仕組みは機能しませんでしたので、社外の公的機関から是正を促されました。
J社はテレビや新聞で報道されなかったので良かったのですが、世間からバッシングを受けた場合には、経営者は進退問題になります。