研究開発と野球チームの打線との関係性について
ある会社の研究部門のトップとお話した時に興味深いことをお聞きしたのでお伝えします。
研究本部長:「研究開発の会社で継続して商品を出そうと思えば、野球の打線を考えてプロジェクト組めば上手くいく。」
今日はこんな会社の人にお役に立てると思います。
①継続的に独自の開発商品が出ない。
②他社の猿まね商品で価格競争でしか勝負できない。
③ホームランの商品しか狙わないので、空振りばかり。
A社の社長は化学系の会社を経営していました。
その業界では、100億円商品でヒット、1000億円商品でホームランと言われていました。
研究開発のある係長が、100億円を狙えるクリーンヒットの商品提案をしました。難易度も高くなく競合度の少ないプロジェクトです。
しかし、その前年からA社長は、自社オリジナルでホームランになるプロジェクトしか狙わない方針にしていました。
つまり、1000憶の売り上げを期待できるプロジェクトしか採用しないというのです。
すると、その係長の商品提案は有望だったにもかかわらず、ボツになってしまいました。
係長:「この状況だと他社よりも早く商品を出せたのに、残念だなぁ。」
一方、課長が提案したのは、販売実現性はたったの2、3%でホームラン企画です。当たれば1000億は狙えます。
課長の提案は通って実行されることになりました。
その他の人が提案する提案もホームラン商品ばかりでした。
つまり、当たればいいのですが、実現性が低いのです。バランスが悪いプロジェクトが目白押しだったとか。。
野球の打線で言えば、みんな1000億円商品を狙って、大振りで強振するホームランバッターばかりを9人揃えて試合に出るようなものです。
みんなヒットやバントを狙わず、大振りの空振りで三振ばかりです。ですので、アウトばかりです。
なので、その会社は2年、ヒットとホームラン商品が出ませんでした。
それで、A社の社長が変わって、ホームラン作戦がダメだったので、今度は他社の猿まねで行くバント作戦の方針が打ち出されました。
つまり、他社のコンセプトを真似て、いち早く一塁の市場を目指して走ります。ホームランばかり狙ったので今度はバントばかりで点をとりに行く方針に変更されました。
それで、研究開発部門から提案される商品はコンセプトが他社のパクリ商品ばかりになりました。
A社は市場にでる前の他社商品情報を入手したり、市場に出たらそれをパクリ、同様な機能を付けて付加価値の低い商品ばかりを早急に作りました。
それは、バントばかり狙うバッターを9人揃えたチームで、いち早く一塁に駆け込みむイメージです。
なお、バントのこの製品は4番手での市場への投入でした。
また、自社のオリジナリティは、市場に出てからお客さんの反応で差別化ポイントを後出しでアピールするようなありさまでした。
すると、どうなるか?
ほとんど他社商品との差別化ができません。なので、その商品はあまり売れません。
1番に出た商品が市場を独占して、2番手3番手が独自の差別化を打ち出して成功していますが、4番手だと差別化できません。
つまり、自社の商品は価格競争の安売りでしか売れません。安売りするから儲けがない状態です。
なので、バント商品は市場に早くでますが、経営的にはうまくいきません。。。
これまでの教訓から、A社は野球の打線のようなプロジェクトを組みました。
①ヒットプロジェクト
②バントプロジェクト
③ヒットプロジェクト
④ホームランプロジェクト
⑤ヒットプロジェクト
⑥ヒットプロジェクト
⑦ヒットプロジェクト
⑧ヒットプロジェクト
⑨バントプロジェクト
こんな感じでプロジェクトを組んだのでした。
ホームランプロジェクトは実現性が低いのですが、当たれば大きいので1つはプロジェクトとして狙います。
あとは、2番と9番にバントプロジェクトを入れて、売り上げの確保を狙うそうです。
その他はいろんなバランスを取りながら、実現性の観点から6つのヒットプロジェクトを入れてクリーンヒットを狙って、売り上げと儲けを両立させる戦略をとったそうです。
⑤ヒットプロジェクトでもは、あわよくばホームランプロジェクトになるようにしたそうです。
そんな感じで実現性と売り上げと儲けのバランスをとるプロジェクトの戦略をとると、安定した売り上げと儲けを確保できるようになったそうです。
まとめ
いろんなリスク(実現性、競合性、差別化)のちがうプロジェクトを揃えて、打線を組みます。
そうするとバランスのとれた打線となり、安定して点数(リターン)が入ることになります。
こういう考え方を「ポートフォリオを組む」といいます。